夫がバイセクシャルな女 #ルミという女②
ルミはKさんの隣に座り、Kさんの向かいに座っている俺とはテーブスの対角線上に位置した。
よくも悪くもバブル世代を体現しているようなKさんのテンションの高さは続く。
絶え間なく続くKさんの話に俺は相槌はうつものの大して耳を傾けていなかった。
ルミのそのキレイな顔をいかに盗み見るかに俺の意識は注がれた。
たまに目が合うと慌てて発言し、会話に参加している自然さを装ったつもりだったが
後から聞けばルミは俺の視線に感づいていたようだ。
当然Kさんの意識もルミに向いている。
#あからさまにね#バブル世代の肉食さてば
俺も40だ。処世術というか、特に目上の男性に対する気づかいは自然と身についている。
Kさんがいかにルミと楽しく会話が弾むか。俺は終始そこに気を払った。
間違ってもルミに気に入られようと振る舞うなんてことはない。
普段ならこれを我慢と言うのだが、この日は違った。
俺は何故だかルミとはまた会うことになると悟っていた。
何も焦る必要がなかった。
それでも時折入ってくるルミの情報だけはしっかり記憶した。
・Kさんとルミは俺と同じSNS内でフォロワー同士
・いつか飲みに行こうという口約束がちょうど今日かなった
・仕事はプロのヘアメイク
・2児の母
・37歳
#まったく見えない#せいぜい30過ぎ
結局Kさんのトークが一息つくことはなく、気づけば終電を逃していた。
俺は最後までサポート役に徹した。
Kさんとルミを同じタクシーに乗せるその時まで。
後日、お礼がてらルミからフォロワー申請があり、SNSで俺たちはつながった。
それでも俺からグイグイいくことはなかった。
ルミとはその後もごく普通にSNS上のフォロワーとしてやりとりをしていた。
なんというか、歳も近いせいもありふつうに仲のいいフォロワーの関係が続いた。
それでもやはりSNSのいけないところはどうしても自分の内面をさらしてしまうことだ。
気持ちが落ちればそれがpostにはにじみ出る。
にじみ出さないようpostを控えればそれはそれで心配される。
そんな時、リアルを知っている同士ならば自然と踏み込んだやり取りに発展する。
多分俺とルミどちらかの仕事がらみのpostからの流れだったかと記憶しているが
メッセージのやり取りが盛り上がり、
オフ会をしようということになった。
オフ会といいつつ2人で会うことの違和感に不思議とどちらも触れなかった。
当然Kさんを誘おうという話も出なかった。
約束のその日、新宿の待ち合わせ場所に現れたルミは相変わらずの美貌だった。
やはり2児の母にも37歳にもとても見えない。
俺は心躍るのを必死にこらえ、オフ会にふさわしいテンションで雑多なエリアの焼き鳥屋へルミを誘導した。
B級な店がいいというのはルミの要望だった。
今思えばエロい雰囲気にならないようにルミなりの予防線だったのかもしれない。
その予防線も無駄だったけど。。